特に理念もスローガンもなく、助産所の開業届を出してもう20年近くになりますが、地域の子育てに触れれば触れるほど、お母さんと子ども、その家族の幸せを強く祈る気持ちになります。
誰にとっても、苦しみは出来るだけ少ない方が、精神衛生上望ましいと思っているので、三日月が出ていても山中鹿之助の名言はスルーです(^^;
お産は痛くない方が良いし、子育ては辛くない方が良いに決まってます。でも、それなら麻酔分娩、それなら保育も教育も外注、というのは違うのです。
健康なママのお産は、身体とマインドの準備で、落ち着いた穏やかなものになることを助産師は知っています。
自己肯定が損なわれていないママは、子どもが親に向かって仕掛ける理不尽な行動を楽しむことが出来ます。
このような常識が非常識になってしまっていることを諦めたくなくて、産前クラスやパパ向け講座、親業トレーニングを提供するのが私のライフワークでした。でも、世の本流に押し流されて隠されてしまうもどかしさをずっと感じてきました。
倫理法人会に入会して、初めて読んだ倫理の本が「無痛安産の書」でした。安産五則というクレドを丸山創始者は残しておられます。引用します。
一 お産は、自分の力でするのではありません。大自然の大きい力で、必ず無事に生ませていただく。すべてを、この偉大な力にお任せいたしましょう。
二 いつだろう、いつだろうと、待ちすぎていらいらしたり、気を揉んだり致しますまい。ちょうど良いとき・よい所で生まれます。みなお任せして、落ち着いた心で過ごしましょう。
三 産気づいても、すべて自然にまかせておりましょう。自分で生もうと、りきんでみたいあわてたり致しますまい。
四 女のほまれ、妻のほこりと、ちょうどスタートラインに立ったような引きしまった心で、何も考えず、何も思いますまい。
五 もし万一、心が決まらぬ時は、日ごろ信ずる神仏の御名をとなえ(心の中で)、また、我が母の名を一心に念じましょう。そこに偉大な力が現れて、いとも安らかに生まれてまいります。
無痛歓喜の安産を、1人でも多くの方に経験していただけるように、ただ苦しみがないのではなく、例えようのない喜びの中でお産が出来るように。これは、女性の身体が生来もっているプログラムの機能でもあります。
この、ほんものの普通のお産を取り扱う地域助産師と産む女性は、わが国ではほんの1%です。
GHQによって家庭でのお産は淘汰されてゆきました。戦後レジームのひとつです。もう、自然のお産を見たことがない医師や助産師が殆どなのです。かくいう私も、勤務時代は「医療のないところで産むなんて危険」と思い込んでいました。
助産師会で、地域の出産を取り扱う助産師と親しく話せるようになって、ゆっくりと洗脳が解けてゆきました。自然に任せるほんもののお産は、むしろ安全性がより高いことを理解しました。
それでも晩婚化や高度不妊治療による高齢出産、極端な少子化による貴重児の概念の変化など、お産を危険視する風潮はますます強まっています。
せめて、合併症のない健康なママたちには、いきなり麻酔出産を勧めることはしないでほしいです。お産と子育ては確実にリンクしています。
反始慎終(はんししんしゅう)!
素直な心で、人間としての原理原則に立ち戻りましょう。