産後ケアホテル当直中に、動画配信サービスのお勧めで流れてきたドラマを見ていました。
舞台は1950年代のロンドン、スラム街。新人助産師のジェニーが修道女たちと一緒に女性と子どもたちのために奮闘するドラマです。
シーズン1の第一話で、全体の評価など出来るはずもないのですが、第一話、素晴らしかったです。何人もの妊娠した女性と出産が描かれます。言葉も通じない異国で25人目の赤ちゃんを産む女性が印象的でした。
彼女は合併症で早産します。死産と思い込んでいたら自発呼吸が!ようやく到着した医師が赤ちゃんをNICUに入院させるよう母に伝えると、スペイン語で「この子の病院はわたし」と繰り返して赤ちゃんを離さない。
普段はふわふわとした笑顔の優しいママが、凛とした表情で意思を貫き通す、その逞しさに感動しました。まさに英雄。
イギリスの産科医、ディック・リード博士が自然のお産の価値に気づいたのは、まさにこのような場所だったのです。医療や麻酔で守られ過ぎると、女性の本来の機能が正常に作動できなくなる、自分の身体への信頼を失ってしまって。
ディック ・リード博士は、偶然立ち会うことになった複数の『シンプルな女性達の出産』経験を背景に、数年に及ぶ研究に乗り出します。この研究により、出産において、もし『Fear、不安や恐れ』がなかったら、そこには痛みも存在しないという理論が導き出されました。
『Fear、不安や恐れ』は子宮へ続く動脈を圧縮し、緊張を起こします。彼は、独自の理論に”Fear(恐れ、不安)ーTension(緊張)ーPain (痛み)Syndrome (症候群)』と名付け、恐れや不安が体を緊張状態にし、子宮においては、その緊張が自然な出産のプロセスを邪魔し、分娩を長引かせ、痛みを引き起こすと提言しました。
この理論は、麻酔全盛の当時のイギリス医学会では受け入れられませんでした。変人扱いだったそうですから…現在なら、脳科学的にもホルモン動態的にもエビデンスが出せるでしょう。
催眠を使って究極のリラクゼーションに導き、恐れを潜在意識ワークで手放して、FTPのサイクルを爆砕するのがヒプノバーシング。
朗らかで愛情に満ち溢れ、いつも通りの自分でいることで、恐れや不安を感じることなく妊娠、出産期を過ごし、FTPサイクルには一切立ち入ることがない倫理の無痛安産。
このような出産理解がある一方で、お産はますます医療の中に絡めとられつつあります。多くの医師は、全ての妊産婦さんをハイリスクだとみなすからです。これだけ訴訟が一般的になると、ドラマの世界は古き良き時代だと言わざるを得ません。
日本でも、麻酔のお産が当たり前になりつつあるのですが、赤ちゃんと呼吸を合わせてコミュニケーションをとりながらゆっくり進む自然のお産は絶対になくならないと信じてます。女性の強さ、美しさ、家族への深い愛情の元となる「エネルギー」に満ちたお産。地域助産師は最後の砦です。
世界大戦の後の混沌とした時代、ロンドンスラム街に描かれる女性の生き様から、また何か気付きを得た気がします。
運命自招。
うん、これだな。運命も境遇も、自分の心の通りに変化していくということ。どんな家族とどんなふうに生きていくのかも、自分の心の通り。