「産後ケア事業」助産院で赤ちゃん死亡、というニュースを見て戦慄。2か月、最高に可愛い時期の我が子を亡くしたご両親のお気持ちを思うと息が止まりそうです。施設や設備への湧き上がる怒りと同時に、信頼して預けた自分を責める気持ちにもなるでしょう。
園バスの事故も、保育園のお昼寝中のSIDSも、なぜ防げなかったのかと、スタッフを責める声は鳴りやみません。
ニュースの記事にこのような記述がありました。
富山市中心部にある施設は、平成29年に開設され、宿泊の場合は最大で3組の母子が利用できます。
開設にあたって施設では重大な事故を防ぐためのマニュアルを独自に策定しています。
たとえば、窒息防止では、寝ている赤ちゃんをうつぶせにしないことや顔の周辺に物を置かないことを定めています。
また転落防止では、助産師などが母親から赤ちゃんを預かってケアを行うときは柵があるベビーベッドを必ず利用するとしています。
このほか、日中は6人以上、夜間帯は2人の助産師が常駐して赤ちゃんの様子をこまめに確認することにしています。
母子が最大3組で夜は助産師2人、日中は6人とありますが、産後ケア一組にかける尋常ではない経費(利用者負担であれば通常の5-6万では全然足りません)をかけて綿密な仕組みを作られているのですが、それでもこの施設なら今回の事故の赤ちゃんは救われたのか?と問われると、分からないとしか言えません。
お母さんが産後ケアを使わずに、ご自宅で赤ちゃんのお世話をしていたら防げたのか。それも全く分かりません。
静かに呼吸を止めてしまう赤ちゃんに気付くことは難しいのです。同じお部屋で家族が過ごしている中で亡くなった新生児ちゃん、先生のすぐそばでぐっすり眠っていると思っていたら亡くなっていた園児さんを知っています。
24時間、5分ごとに呼吸を見ていなければならないほど、赤ちゃんが危険な状態にあるのであれば、産院はモニタリングを外して母子を退院させることは出来なくなります。
わたしが危惧するのは、この事故をメディアが取り上げて、産後ケアのハードルを手が届かないほどに上げてしまう可能性です。
多くの施設ではマットタイプの呼吸センサーを使っていますが、それがSIDS予防にはならないこともエビデンスが出ています。赤ちゃんに24時間、Spo2モニターをつけろという話になっていくかも知れません。
赤ちゃんから一時も目を離さない専門職を常時置くのであれば、その担当者は赤ちゃん専属で、ママの日常のケアも出来なくなります。また、異常時に即医療介入できる体制を整えるのであれば、最も安全なのは24時間体制で小児科医が救命してくれる病院内ということになります。
それを加味して考えれば、宿泊型産後ケアの利用料は現状(一般的な)の倍ではすまなくなるのではないでしょうか。
コスト度外視で母子への思いだけで運営している、助産院の暖かい産後ケアは継続できなくなります。
なんで茉央ちゃんは逝ってしまったのか。産後ケアで心身穏やかでいられるママと一緒に過ごす毎日は、茉央ちゃんにとっても、とても幸せな日々だったと思います。満たされた環境で、これから100年の幸せな未来を生きる人だった。
心より冥福を祈ります。
SIDSの原因は未だ不明です。健康な赤ちゃんが突然呼吸を止めてしまうことがなぜ起こるのか、一日も早く理由が明瞭になりますように。子どもたちを守るため、ママと、支援者が安心して行動できるように。
苦難福門。
このような事故は、多方面に苦しみをもたらします。
苦難に直面したときは、嫌がったり逃げたりせずに、堂々と受け止め、自分を改めていく。そうして、扉が開くのだと信じます。