今日は安全なお産について。わたしは自分が分娩を取り扱わないので、嘱託医に忖度しないで発言できる助産師です(^^;
ヒプノバーシング講座で医療介入の歴史を説明する際に、絶対に外せないのが19世紀の産科医、Dr. Joseph DeLeeの存在です。
この米国の医師は、「お産はすべてハイリスク」だと捉え、以下のルーティンをお産に導入した人です。
鎮痛剤の使用。全例への会陰切開。鉗子の使用。分娩台の上での砕石位。
1900年代の初期、まだ女性の権利も赤ちゃんの心理も一顧だにされなかった時代の遺物が、今もなおスタンダードなお産として病院では行われている事実があります。
それに対し、助産師と信頼関係を築いた女性が、自宅や助産院で行うお産は、本能的な出産に限りなく近いものとなります。動物はどんな場所で子を産むのか、それは敵のいない私的で安心できる場所、集中を妨げるものから守られた隠れ家のような場所です。
そして、知性の高い動物では、出産に寄り添う役割をもつ同性(雌)が存在すると聞きました。その存在がお産を安らかにし穏やかにするのです。
お産を導く自然なOXTは、女性と赤ちゃんを苦しめないようにパルス状に分泌され、二人の状態に合わせて濃度を調整してゆきます。
そして収縮のピークでは、エンドルフィンによる緊張の緩和がこれもまた自然に行われて、産道以外の全身のリラクゼーションを促します。
顔を真っ赤にしていきむような力は不要で、ただ自然に産み出すための反射が起こり、呼吸だけで赤ちゃんは産道を滑り落ちてゆくのが自然なお産です。
誘発や促進に使う人工OXTとはかなり違った経過となりますが、非常に安易に使用されている状況があります。というか、自然なOXTが分泌されにくいような環境があるということです。病院にも、ママの暮らしにも。
出産中の薬物(麻酔も含まれます)は、ママの血液を通して、お腹の赤ちゃんの脳に影響することが判っているのに、これも安易に勧められています。殆どの麻酔分娩(このお産を無痛分娩とは呼びたくない)は、OXTによる誘導とセットですし、産み出す反射も起こらないので、お腹を押す圧出や赤ちゃんの頭を吸引カップで引くケースが多くなります。
産道をママと呼吸を合わせてゆっくりと進んで行く優しいお産で始まる人生を、この新しいいのちに体験してほしいと心から願っています。
母子のいのちを守るために、自然の出産が出来ないときには命綱の医療をしっかりと握り、介入を受け入れることは必要です。でも、出産に不安を抱く女性に、本来の産む機能の説明をせずに、麻酔の使用を勧めるのは悪だと思っています。
OXTは、愛情をつかさどるホルモンでもあり、母子の愛着行動の鍵でもあります。母乳を湧かせる働きはよく知られていますが、羊の実験では、母乳を与えられた子羊の視床下部からもOXTが分泌されることがわかっています。隔離されて初回の哺乳が遅れた子羊は、母羊と他の羊を混同するそうです。
自然のOXTがママと赤ちゃんの絆をより深めていく環境を、周囲が守らなくてはなりません。それは、医療従事者の使命でもあり、赤ちゃんのパパの最初の大仕事でもあります。
生まれた赤ちゃんが、すくすくと育ち、自律した優しい温かい心を持つ人に成長することが命題。その未来のために、お産をもっともっと大切にする世界になってほしいです。古き良き時代の、良い風習を取り戻したい。
反始慎終。
倫理の無痛安産がスタンダードになれば、人工OXTなんて出番がなくなるのに!と思いつつ…
今のわたしはエビデンスとリラクゼーションのコラボでホルモン分泌を整える、ヒプノバーシングエデュケーターとして真心を尽くして働きます!