大好きなナルニア国物語の作者、
C.S.ルイスの沢山の著作の中で
わたしの心に響く一冊は
「天国と地獄の離婚」。
読みやすい大人向けファンタジーです。
この物語のテーマは天国と地獄は
髪の毛一筋も相容れない、です。
ここで描かれる地獄は、
今私たちが住んでいる世界に
そっくりです。
住人はとても自己中心的で欲動的ですが
それなりに暮らしています。
でも、そこは灰色の世界。
地獄の住人は天国にバスツアーで
出かけることが出来ます。
その天国の描写で特筆すべきは
物質の質量が大きいこと。
地獄の住人には風にそよぐ野の花が
重くて堅くて摘むこともできません。
もちろんこちらは総天然色。
光り輝いて目が眩む美しさです。
そんな場所がとても居心地が悪くて
気分が悪いとバスから降りない人もいます。
天国に残ることも出来るのに
灰色の町へと帰っていくのです。
そこに、地上世界で知人であった
天国の住人たちが訪ねてきます。
天国の住人は一様に陽気で
もちろん質量を持っています。
ルイスは、地獄の住人をゴースト、
天国の住人をスピリットと表現します。
スピリットは天国に残るよう
ゴーストを説得しますが
ゴーストは聞き入れません。
ゴーストはスピリットを
疑い、侮辱し、悲しませようとしたり
怒らせようとしたりしますが
スピリットの愛と喜びは揺らぎません。
この対比は現実世界にもありますが
もう、勝負にならないのです。
善なるものは、硬さもサイズも
知恵の深さも桁違いで。
最後は、作者の夢だったというオチです。
それでもメタファーとして伝わるものが
非常に力強くイメージがしやすくて
何十年もの間、大好きな本です。
すべての罪は、吹き込まれた
エネルギーの歪曲であると
ルイスは考えます。
善きものは一つしかなく、
それは神であり
そのほかのすべてのものは
神様の方を向いている時には善であり
背を向けている時には悪なのだ、と。
興味と喜びで世界が輝いていた
小さい頃のように、素直に朗らかに
今日を生きることが出来れば
日常が天国に近付くのでしょうね^^
ちなみにルイスはキリスト教作家ですが
「宗教」が嫌いだそうです。
宗派のルールへの配慮は抜きにして
ルイスが考えるほんとうの信仰のかたちが
童話や小説に描かれています。
ルイスの「ナルニア国物語」の
最終章「さいごの戦い」で
タシという邪神が描かれていますが
タシを心から信仰していた青年が
神の化身アスランに「息子よ」と
呼ばれるシーンがあるのです。
善きものを求め続ける心を
ほんとうの神様はご自身への信仰だと
受け止めてくださること、
日本の一般家庭で生まれ育ったわたしには
とても嬉しいメッセージでした。
善や悪の基準は、時代や状況によって
変容することもあるのでしょう。
しかし、聖と邪を
併せ持つことはあり得ません。
夫や子ども、ペットに対する愛にも
善なるものばかりではない
自己中心的な愛が含まれます。
それを見抜くことが出来ないと
ルイスの描くゴーストと同じく
自己憐憫や自己満足に
陥ってしまうのですね。
自我や固定観念から自由になると、
多くの感情が手放せるようになります。
最後までお読みいただき有難うございました(*´∀`*)